めちゃくちゃ面白かった。

読書初心者なのでわからないのだが、このレベルで面白いものがゴロゴロあるのだろうか。

それとも本書が特別な一冊なのか、わからない...

少し前まで読んでいたのが安部公房。

それはそれで面白かったのだが、解説を書かれていた聡明な方ですら、ここの読者の意図はわからないが...というようなことが書かれていた。

ということは、知性の低い自分が読めば正しく解釈できない部分が多々あるということになる。

作者も、読者にちゃんと理解させようと書いていないような節がある。

昔の本を読むとそういう印象を受けることが多い。

そういう風潮があったのだとは思う。

最近現代作家さんの本を読み始めてから、読者が納得できるように書かれた本のすばらしさを知った。

折れた竜骨も、当然その辺には気が配られており、気持ちよく読み終わることができた。




上巻では、推理の正しさを示すために、状況を整理するような場面が多かった。

ミステリー作品の下準備のようなもので、必要不可欠なのだと思う。

良かったのは、状況整理をするなかで、登場人物とのつながりや人格の把握もさせられたところ。

上巻で把握した人物像が、下巻で生きていた。

上巻は情報整理なので読む速度が落ちるが、下巻はストーリー展開をただ楽しむ部分が多かったので読む速度が上がった。

登場人物にはかなり魅力があった。

夜盗でありながら、戦場にはしっかりと駆け付け、推理後の去り際も恰好良かった。

民間人で、訓練をあまり積んでいないであろう民兵が駆けつけるところもよかった。

そして唯一戦場に駆け付けなかった者と、その人物にぶらさがるだけの騎士たち。

人を嫌な気にさせる人物も必要ではあるが、多すぎると嫌な作品になる。

その塩梅も良かった。

戦闘描写が小説ではかなり嫌いな部類だが、折れた竜骨に関しては、推理描写のところよりも戦闘描写のところの方が見所があった。

登場人物たちがどういう態度で接し合うのかだけが気にかかり、領主殺しの犯人が誰なのかとはほぼ気にならなくなっていた。

何より作品の冒頭から、領主殺しの犯人は操られて意識がなくなった状態ということなので、読者には責める対象ではないと繰り返された。

ミステリー小説の全体がどうなっているのかはわからないが、犯人を端役にするとがっかり感が出てしまうのでそれはできないのだろう。

侵略者による虐殺もあって、領主一人の殺害の重みはかなり薄れる。

領主を殺害した犯人を推理するのがメインでなく、登場人物たちの生き様を見るというところがメインになってくると思う。

そういう楽しみ方を十分にできる作品だった。

氷菓の登場人物たちは相当魅力的で、主人公の友達以外みんな100点という感じだった。

何が人を魅了し、何が人を不快にするかというのをよくわかってらっしゃるのだと思う。

本作でも、0点の新領主以外みんな好きという印象で終わった。

主人公の不快感も完全に皆無なのもよかった。

性癖にぶっ刺さるドチャしこガチ100点のハール・エンマさんは最高だった。

犯人が犯人だけに、幕引きは寂しいものがあったが、読み終えて大満足だった。

あきらかな嫌われ役として選ばれた新領主が何らかのトラブルで殺され、主人公が女領主になれば全員ハッピーになれたが、そこまではされなかった。

その辺の終わり方は、私の大好きなアルドノア・ゼロと似た感じで良かったと思う。







米澤穂信さんの本は、自分の中のNG物(恋愛主軸、暑苦しい青春もの、いじめ、家庭内暴力、レイプその他の不快な要素が核になっているもの)以外はすべて買い集めたはず。

またこのレベルの本を読めると思うと、嬉しい限り。

るかこさんの推薦された、米澤穂信さんと北村薫さんの本をとりあえず1冊ずつ読み終えた。

あとは、読書会で気になり買い集めた恩田陸さんの本をとりあえず1冊読むことにする。

米澤穂信さんは、人物を魅力的にするの技術が卓越していて、ストーリー展開が気になるように構成されていて、読んでいこうと思える推進力がある。

北村薫さんは、詩的な情景描写が素晴らしく、作品が美しいという印象。

恩田陸さんはどのような方なのだろう。

自分の感性に合う作家さんだと嬉しい。

最初に何を読むかで印象が大きく変わりそうなので、ある程度おすすめ上位に選ばれている中から、あらすじを読んで決めよう。