自分が買ったのが、39版。

ここまで増刷されている本はあまり持っていない。すごい。


キャラ立ちがとても良く、26ページ読み終える頃にはキャラクターに好感が持てた。

描写もとても心地よいし、冗談も面白い。

”折れた竜骨” は自分にかなり刺さった作品で大好きだが、アリバイ調査などは大味だった。

(最近、"折れた竜骨" が恋しくなることが多い。隙のない作品よりも "折れた竜骨" が自分には刺さっている。)

本書は、大味という印象はまったくなく、丁寧で緻密という印象。


1話を読み終えて思ったのは、最初の方に ”携帯で絵文字を使わないのは、相手が使うのを好まないと思ったから相手に合わせている" というようなやりとりがあった。

1話の最後に、女の子の方が主人公の回答に合わせて、自分もわからない、と言った気がする。

自分が感じたとおりの意図だったとしたら、上手い流れで書かれているなぁと思った。

主人公が、恋愛感情に毒されていないとも取れるので、その辺は好感が持てる。

今後、二人の恋愛熱が高まってしまったときに、この話が蒸し返されることはあるのか気になる。

本書を読み終えても、恋愛関係が進展する素振りはなかったので、最終巻付近の伏線になるのだろうか。


米澤さんは、キャラクターを魅力的に描くのと、キャラ同士の距離感の保ち方が上手い。

ヒロインの終盤の豹変ぶりも良かった。


日常系で緊張感を出す場合、

恋愛関係、三角関係、家庭内暴力、病気、性暴力、いじめ、相続争い

などがあり、

どれも不快なものなので、これらが主軸になる作品はできるだけ避けるようにしている。


本書では、高校生の犯罪者集団が出てきて、性暴力などにまで発展しかねない展開になったときにはひやりとした。

犯罪者集団に力で挑みかかれば、不快な展開になることは避けられなかったので、不快な連中と直接対面することなく処理してくれたのは助かった。

とはいえ、犯罪者集団で物語に緊張感が出るというのは、味付けとしてはやはり嫌いだった。

面倒ごとになって、不快な展開にならなくて良かった...


カンニングの件を種明かししなかったのは好きだった。

一番好きだった展開は、美術部員がブチギレて絵を破り捨てたところ。


全体としては、結構好きな感じだった。

主要な登場人物は、犯罪者集団以外は魅力的で良かった。


数日前に読んだ ”謎物語 あるいは物語の謎” で、北村さんのこどもが、"この登場人物がこの歳でこんな発言をするのがおかしい" というような指摘箇所があったと思う。

それが頭に残っていたせいで、本書で、高校生が、

”有印公文書偽造” (よく知ってるな)
”古馴染み”(かなり年配が使う言葉なのでは?)
兄のことを ”あれ” と呼び、兄のこどもを "あれの子供” と呼ぶ(こういう呼び方は70歳くらいの人がよぶ印象。うちの愚妻は、というような呼び方をする世代の印象)

と言うのがあって、注目してしまった。

明らかに頭が良い設定の主人公ではない登場人物たちからこういう言葉がガンガン飛び出してくる。

これでいいと思う。

私のような薄ぼんやりとした高校生が出てきて、平易な言葉でやりとりをされるよりもよほど良い。

魔法科高校の劣等生のお兄様のようなオーバースペックの人が出てきても全然良い。

それで面白くなるのであれば。



楽しめたのは楽しめたが、やはり日常系だと自分は物足りない気がする。

折れた竜骨が恋しい...